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【第六話「任務と情」】
邪信徒からの追っ手を引き受けたクラリスを除き、ググマドの村に到着したシオン達。そのググマドの村は外気温の暑さと裏腹に住民の表情は暗く冷たかった・・・。 まるで生気を感じられず、何かに常に怯えるかの様に視線を泳がせている・・・。
「噂以上に酷そうだな・・・」 「ここの邪将の影響なのね・・・アフィーヒの村と対照的ねぇ・・・」 「宿を確保しましたよ。アーカムさんは、情報収集に出たので後で合流するそうです」 「そう・・・結構走ったから疲れたわね」 「誰のせいなんだか・・・」 「クラリスも追い付くかしらね・・・」 「それも誰のせいなんだか・・・」
シオン達はググマドの村にある宿「篝火亭」に向かい体を休める事にする。ちなみにクラリスとの距離は約5時間くらいの差で遅れてる。邪教徒の追っ手を迎撃する為に道中で残ったのであるが、このクラリスの不在がシオン達にとって思わぬ不運を生み出す事になる・・・。
「アーカム、遅いわねぇ・・・」 「夕方には一度戻ると仰ってたんですけどね・・・」 「・・・何か外が騒がしくないか?」 「まさか・・・!」 胸騒ぎを感じてシオン達は宿屋を出ると村の住民が集まっている。その住民の集まる中央には一人の女性と複数の黒衣を着た者が居た。
「(もしかして、邪将・・・!?)」 「(みたいじゃな。邪教徒もおるな)」 「(ここの村も女性の邪将なんですね・・・あっ!)」
女性の邪将とは、冷酷なる邪将ことニシナ=フリーディアの事である。そのニシナの配下達の前に盗賊アーカムが居た。
「コソコソと怪しい奴が居ると聞いたけど、何者かしら・・・?」 「ただの旅人だ・・・それよりも何なんだ?あんた達は・・・」 「知ってるんじゃなくて?邪教団よ・・・正体を明かさないと言うのなら、見せしめとして配下にリンチを下すけど?」 「・・・」 「私は正体を明かして、貴方は言わないのかしら?ねぇ・・・旅人さん?」
アーカムは黒衣の信徒達に囲まれて逃げる事は不可能である。仮に逃げたとしてもニシナに怯える住民達がアーカムを捕らえるであろう。 野次馬の中にシオン達を確認したアーカムは他人のフリをする。あくまでも任務優先主義で、シオン達に迷惑を及ぶ事はしないと言う事である。
「(アーカムさん・・・!)」 「(駄目じゃ・・・今行くとアーカムの気持ちを無駄にするぞ)」 「(でも・・・!)」 「(・・・堪える事もリーダーとして必要じゃ・・・堪えるのじゃ・・・シオン)」 「(レッドさん・・・)」
同僚のレッドが一番辛そうな表情をしている。それもそのはずである。このサラマンディア島に情報収集の任務を任されて来たのは、アーカムとレッドの二人である。いつも二人で行動して来ており、またレッドとしては自分より若いアーカムを何よりも大切に思っているからである・・・。
「・・・貴方の目を見てると、何があろうと口を割る気は無さそうね?」 「・・・!!」 「貴重な体験をさせてあげるわ・・・暑き島国で凍死と言う体験を・・・ね」
ニシナがアーカムを睨み付けると、ビシビシとアーカムの体に霜が張る。アーカムがあまりの恐怖で絶叫したその瞬間・・・
「・・・うわっ!」 「ぐわっ!」 「・・・出て来たみたいね・・・鼠が」
二人の邪教徒が倒されると、勢い良く飛び出てくる若き少年が居た。
「(シオ・・・ン?)」 「やらせない・・・!俺の前で・・・人を・・・仲間を殺す事は!!」 「あの馬鹿・・・堪えろと言ったってぇのに・・・」 「レッドはここで大人しくしててね」 「ネイナ?まさか、お前さんまで行く気か?」 「・・・」
シオンに続いてネイナも邪信徒を薙ぎ倒して現れる。ニシナは驚く事無く冷笑を浮かべて二人に拍手をする。 「いいね・・・友情って奴でしょ・・・?小僧一人に女一人・・・数が合わないけど君達かしらね・・・ヒルダを退けさせたのは」 「(何なの?この女・・・この火山島で馬鹿みたいな厚着しちゃって)」 「凍死する屍が増えたって訳ね・・・さっさと仕事を終わらせちゃおうかしらね」 「それはこっちの台詞だ!・・・食らえ!青き牛角の一撃・・・タウラス!!」
シオンが青い羽根をニシナに投げつける。青き羽根は一直線にニシナに襲い掛かるが、ニシナは一睨みすると青い羽根が一瞬で凍り付いて大地に落ちる。
「何!?」 「子供のおもちゃにしては物騒ね。このニシナ=フリーディアを甘く見ない事ね」 「うっ・・・何だ?この異様なまでの冷気は・・・」
ニシナが厚手のダウンジャケットを脱ぐと、一瞬で北国の様な寒さが立ち込める。
「血も凍らせてあげるわ・・・コールドブラスト!」 「やめろーー!!」 「・・・!?」
アーカムがシオンの前に飛び出すとアーカムが一瞬で凍り付く。アーカムはそのまま命の鼓動を停止させて凍り付いたまま大地に横たわった・・・。
「アーカムさん・・・!」 「・・・麗しい友情ね・・・」 「シオン!どいて!!」
ネイナがニシナに得意の飛び蹴りを見舞わせ様とする。ネイナは氷に対する耐性能力は高いのであまり寒さを感じてないみたいである。
「なるほど・・・貴女が水の精霊使いの女ね・・・」 「うっ・・・!」
ニシナはネイナの蹴りを避けると渾身の力でネイナの腹を殴り付けた。ネイナは吹き飛びアーカムと反対側の場所に倒れこむ。更によく見るとネイナの腹部は少し凍りついている。 「・・・一瞬で二人を・・・」 「さあ、坊や・・・潔く死を選んでもらうのだけど、どう言う死に方が良いか選ばせてあげるわ」 「・・・」 「一つは凍死、一つは斬首、一つは・・・」 「・・・」 「戦意喪失って所かしら・・・?つまらないわね・・・じゃあ、凍死に決定ね!」
ニシナはシオンを強く睨み付ける。強く睨まれるとアーカムの様に凍り付いて瞬時に凍死してしまうであろう。
「俺は・・・」 「・・・?凍らない?」 「俺は、自分の迂闊な行動で一人の仲間を殺してしまった・・・そして一人の仲間を痛い目に遭わせてしまった・・・」 「何だい・・・この坊や・・・?何故凍らない!?」 「羊の往生・・・緑の羽根のアリェスは絶対的な防御を誇る」
シオンの手には緑色の羽根が握られていた。緑色の羽根を強く握り締めながら、再び青い羽根を取り出す。 「ニシナとか言ったな・・・お前には、ヒルダさんの様な温かさが無い奴は・・・ここで散ってもらうぞ!!」 「小僧が・・・ならば、氷の一撃を受けよ!!」
ニシナの指先から無数の氷柱が飛び出てシオンに発射される。しかしシオンは青い羽根で全て弾き落とす。
「何っ・・・この坊や・・・勢いだけで来た訳じゃないと言う感じに・・・」 「覚悟しろ!」 「!」
シオンは青い羽根を剣化させてニシナに切り掛かる。しかしニシナは瞬時に交わす・・・が、僅かに頬を掠めた。
「・・・この私に傷を・・・!許さない・・・許さないわよ!!」 「俺の怒りだって収まらねぇよ!!」 「ふざけるんじゃないよーーーー!!」 「うわっ・・・!!」 ニシナの魔力が爆発すると、周囲が一瞬で凍り付いたり先程の氷柱攻撃が無差別に放たれる。
「うっ・・や・・・やめろ!!」
周辺の民家が次々と破壊されたり、周囲に居た住民達が次々と倒されていく。ニシナは見境無く攻撃してるので部下達も犠牲になっている。
「やめろ!やめろ!やめろーーーーっ!!」 「うるさいぃぃ!この私に傷を付けた罪は重いのよ!!」
シオンが止めに入るが凄まじい冷気で近付けない。こうなると緑の羽根で自分と近くに倒れてるネイナを守るしか出来ない。
「うおおお!」 「レッドさん!」 レッドは幸いにも冷気で安全な場所に吹き飛ばされて軽傷で済んだ様だ。しかし他の住民達は阿鼻叫喚の地獄絵図と曝されていた・・・。
「くそっ・・・これも俺のミスだと言うのか・・・!!」 「・・・違うわ・・・シオンの行動は間違って・・・ないわ」 「ネイナさん・・・」 「もしかするとウォルスが居たら怒るかもしれない・・・けど、私は・・・シオンの行動は正しいと言ってあげられる・・・」 「・・・」 「止めるわよ、ニシナを・・・」 「しかし、あのままじゃ近付けませんよ!」 「・・・それでもやるのよ!!」 「!?」 「アーカムの死を無駄にする気?彼は任務の為に死んだわ・・・そして、貴方の為に死んだのよ!」 「・・・ネイナさん・・・そうですよね・・・今、ここで俺が何もしないのは、アーカムさんに対して冒涜の行為ですよね」
シオンはネイナと共に立ち上がる。ネイナはフラフラとしながらもまずは、防御呪文を唱える。
「氷の精霊よ・・・怒り狂う者の冷気を和らげ給え・・・」
ニシナの魔力が徐々に平静を取り戻したかの様に安定して来る。結果的にニシナを救ってる気にさせられるので、ネイナは不愉快な表情であるがシオンの為を思えば我慢出来る。そのシオンは、紫の羽根を取り出し身構える。
「紫は魔弾の射手・・・サジタリース・・・行け!!」
紫の羽根は拡散してニシナに一斉に襲い掛かる。ニシナは冷静さを戻して紫の羽根に対して防御する。流石に無数に襲い掛かる羽根を交わせる余裕は戻ってない。
「ううっ・・・何て坊やだい・・・窮鼠、猫を噛む・・・とはこの事か・・・」 「無数の傷を付ければ、傷の一つや二つも気にならないだろう!」 「ナメた真似を・・・(ヒルダが手を焼いた理由が分かったわ・・・確かにそこいらの冒険者と言うレベルじゃないさね・・・)しかし・・・!!」 「ファイアボルト!!」 「何!?火の精霊魔法だと・・・!?」 ニシナが素早く防御する。流石に火は苦手なのか、紫の羽根攻撃の防御は捨てて火の魔法に対して完全防御に出た。
「クラリスさん!」 「ふふっ・・・遅いじゃない?」 「すみません、これでも急いだ方ですが・・・」 「チッ・・・このままでは不利ね・・・・・・いいわ、この場は退かせてもらうわ・・・次のムレームフの村で待ってるわ!」 「あっ・・・!」
ニシナは魔法で姿を消すと完全に居なくなる。立ち込めていた冷気が徐々に収まり元の気温に戻る。
「逃げたか・・・」 「助かった・・・かもね」 「そうですね・・・相手の手の内を分かっただけ、我々も相手も収穫はあったのでしょうし、無理する事無いでしょう」 「・・・おーい、大丈夫か・・・」 「レッドさん・・・無事でしたか・・・すいません」 「・・・気にするな・・・お前さんは良くやったんじゃ」 「でも・・・アーカムさんが・・・」 「アーカムは満足だろうよ・・・お前さんが自分の為に助けに来てくれた事に・・・そしてお前さんを守る為に散った事も・・・」 「・・・」 「ワシらは任務に忠実じゃからな・・・あまり情と言うのに流される事はタブーとしてるのじゃ・・・だから、アーカムも嬉しかったのじゃろ・・・今は前を見て進め」 「・・・・・・はい!」
ネイナは泣き崩れるシオンを抱き締めていた。レッドはシオンの頭を撫でていた。クラリスは今追い付いたばかりなので状況を確認していた。 村の崩壊度、ニシナの暴走の犠牲になった住民達、そして命の息吹なく倒れるアーカム・・・クラリスは静かに黙祷を捧げる事にした・・・。 (つづく)
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